2025〜2026年にかけて話題に上がっている「カスハラ対策義務化」。
ニュースではよく見かけるものの、「結局、自分の働き方はどう変わるの?」とモヤモヤした気持ちのまま過ごしている人も多いと思います。
私自身、以前クレーム対応をしていたとき、胸の奥がじんわり重くなるような感覚に何度も襲われました。
「今日もあの電話が来るのかな…」と、朝の通勤電車で深く息を吸い込んだ記憶があります。
周りには相談しづらくて、ただ耐えて乗り切ろうとするしかない。
そんな日々もありました。
だからこそ今回の動きは、ルールが増えるというより、「やっと働く人を守る方向に舵が切られた」という実感に近いものがあります。
職場に仕組みが整っていないほど、個人が抱え込んでしまいがちですが、それを社会全体で変えていこうという流れが、ようやく形になりつつあるんですね。
この記事では、「変わるポイントはどこか」「自分自身や周りのメンバーをどう支えられるか」を、日常で起こりやすい場面を思い浮かべながら整理しました。
読み終える頃には、これからの働き方に向けて「自分が取れる一歩」がはっきり見えてきます。
- 最近、顧客からの無理難題や暴言に悩んでいる方
- 部下のメンタル状態が気になり、どう支えればいいか迷っている方
- 会社のカスハラ対策が曖昧で不安を感じている方
- 管理職やリーダーとして、相談されたときの判断軸を持っておきたい方
- 義務化で企業に「何が求められるのか」をざっくり押さえたい方
2025〜2026年、カスハラ義務化の流れの中で企業に求められる姿勢
カスハラ対策が義務として求められるようになる――
そう聞くと、「ついに線引きがはっきりするのかな?」と期待したくなります。
でも実際のところ、境界線がくっきり浮かび上がる…という展開にはなりません。
いろいろなケースが混ざり合う現場
そもそも、カスハラの定義には「社会通念上不相当」という、少し幅のある表現が使われています。
たとえば言葉が強めでも、事情を聞いてみると「商品の不具合で困っているだけ」なんてこともありますし、逆に落ち着いた口調でも何時間も拘束されるようなケースもあります。
最初は普通のクレームだったのに、途中から執拗な要求に変わっていく…そんな経験が私にもあります。
実際のカスハラにはいろんな形があります。
- 暴言・怒鳴りつけ・人格を否定する発言(「常識がない」「だからダメなんだ」など)
- 威圧的・脅すような態度
- 過度な長時間拘束(同じ要求を何度も繰り返して1時間以上電話を切らない など)
- 本来対応できないムリな要求(制度上不可能なことや個人への責任転嫁)
- セクシャルな発言を含むクレーム
まるで違う種類の問題が同じ箱に入っている状態なので、一つの基準で線を引くのは、どうしても無理があるんですよね。
さらに、同じ言葉でも受け手の状況、業界の文化、その日の混雑具合や他の客との関係性でも受け止め方は変わります。
だから最終判断は、どうしても個別に見ていくしかありません。
カスハラの代表的な種類と該当例
| 種類 | 具体例 |
|---|---|
| 暴言・罵倒 | 人格否定、威圧的な言動 |
| 過剰要求 | 不可能な納期要求、担当外の作業を強要 |
| 粘着的クレーム | 同じ内容を長時間・高頻度で繰り返す |
| 脅迫行為 | 法的措置をちらつかせる、執拗な威嚇 |
それでも義務化には大きな意味がある
では義務化の目的は何なのか。
一言で言えば、企業が「ちゃんと対策しよう」と動き出すための後押しなんです。
放置できない環境をつくることで、働く人が孤立せずに済む。
これは、2020年代に入ってから特に社会全体で強く求められてきたテーマで、SNSで共有される「過剰なクレーム動画」なども、ある意味で時代背景を象徴しています。
厚生労働省も、これに合わせて企業向けのマニュアルや具体例を整理していく流れです。
それらが広がっていけば、
- 職場のルールが統一される
- 従業員研修で「どこから危険なのか」が共有される
- 困ったときに相談できる仕組みが整いやすくなる
こうした「働く側の心強さ」が、じわじわと形になっていきます。
「毅然と向き合いやすくなる社会」への一歩
今回の義務化は、「今後はこれがカスハラです」と断言する制度ではありません。
けれど、
- 曖昧さに悩んだら相談できる
- 不当な要求に対して断ってもいいという安心感が生まれる
- 企業が「守る側として動くべき」という土台が強くなる
という意味では、大きな前進です。
私もクレーム対応で胃が痛くなった日を何度も思い出すので、この方向性は本当にありがたいと思っています。
働く人が声を上げやすくなる未来に近づくのなら、それだけで十分に価値がある一歩だと感じています。
女性社員が知っておきたい「自分を守るためのカスハラ対処」
現場では、表情や声色まで丁寧に保とうとし続けて、気づけば心がすり減っていた…そんな声を聞くことがあります。私自身、クレーム対応のあと休憩室でしばらく深呼吸ができなかった日が何度もありました。
この章では、
- 我慢しなくていい境界線の把握
- その場しのぎで終わらない「記録」の残し方
- 相談しやすくなる伝え方の工夫
の3つを中心に、今日から試しやすい形にぎゅっとまとめました。
心当たりのある場面が浮かんだら、「あ、これは私だけじゃないんだ」と思って読み進めてください。
では最初に、どの行為が「もう我慢しなくていい領域」なのかを一緒に整理していきます。
「我慢しなくていいライン」を具体的に示す
私が初めて強い言葉を受けたとき、「もっと説明の仕方があったのかも」と自分を責めてしまった経験があります。
でも後で振り返ると、どれだけ丁寧に話しても相手の態度は変わらなかったんです。
多くの人が同じように自責しがちですが、国が示すガイドライン(厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」)などでは、以下のような行為は「あなたとは関係なく不当」とされています。
ありがちな「NG我慢」
- 土下座・過度な謝罪の強要
一度断っても続くようなら、即エスカレーションの対象です。 - 人格否定や暴言(例:「常識がない」「役に立たない」など)
これは「クレーム」ではなく「ハラスメント」として扱われます。 - 外見・性的要素を含む言動
仕事に関係しているふりをしていても応じる必要はありません。 - 制度上できない要求(例:個人の電話番号を渡せ、特別扱いをしろ)
これらはすべて、あなたが拒否して良いラインです。
即エスカレーションすべきサイン
- 身体的な危険を感じた
- 怒号が10分以上続く
- 「訴える」「会社を潰す」などの脅し
- 個人攻撃・属性攻撃(年齢・容姿・家庭状況など)
冷静に会話を切り上げるためのフレーズ
急に言い返すのは難しいものです。
私も最初は喉がつまって声が出なかったことがあります。
そんな時は、あくまで淡々と、次のような短い言葉を使うのがおすすめです。
- 「こちらでは判断できませんので、上席におつなぎします」
- 「このままのご状況ではお話を続けられません」
- 「ご要望は伺いましたので、社内で確認してご連絡します」
- 「不当な要求にはお応えしかねます」
「会話を終えるきっかけをつくる」だけで、状況が一度リセットされやすくなります。
次は、トラブルが続いた時にあなたを強く守ってくれる「記録の残し方」を紹介します。
証拠の残し方と「記録のコツ」
どれほどつらくても、言葉だけでは状況を説明しにくいものです。
私が以前相談したとき、担当者から「少しでもメモがあれば助かる」と言われ、その瞬間はっとしたことがあります
気持ちが揺れる日ほど、事実を「形に残す」ことが自分の味方になります。
残すべき記録の種類
1. メールやチャットログ
やり取りが証拠になるので、可能な場面では「電話ではなくメールで回答しますね」と切り替えるだけで、後の負担がぐっと減ります。
2. 通話記録・メモ
録音できるなら保存を。
難しければ次だけでOKです。
- 日時
- 相手の言動(箇条書きで)
- あなたが取った対応
3. 画面キャプチャ
削除されやすい暴言メッセージはスクショが最強です。
時系列で書くときの“迷わないコツ”
時系列と聞くと難しく感じますが、3行テンプレを使えばすぐ書けます。
- ○月○日 ○時〜○時
- 相手の言動(例:「お前じゃ話にならない」と繰り返し発言)
- こちらの対応(例:説明を続けたが会話が成立せず中断)
ここに「影響(業務に支障が出た等)」と、「希望(上席対応をお願いしたい等)」を足せば、社内報告として十分な形になります。
忙しくてもできる「30秒記録」
- とりあえず3行だけ
- 感情は書かない
- 後から足せるよう「空欄」でもOK
記録は、「未来の自分への救援物資」のようなもの。
積み上げた分だけ心が軽くなりやすいです。
では次に、その記録をどのように相談につなげるか見ていきます。
相談窓口・上司への伝え方のポイント
「大げさに思われたら…」
「忙しいのに迷惑かもしれない…」
そんなふうに感じた経験はありませんか?
私は何度もあります。
けれど、相談された側の上司があとから言うのは、「早く言ってくれればよかった」の一言でした。
相談は「負担」ではなく「会社が把握すべき情報」です。
「感情的に見えない」伝え方
「事実 → 影響 → 相談」の順が一番誤解を招きません。
● 事実(Fact)
「本日10時頃、20分間にわたり強い口調の叱責が続きました」
● 影響(Impact)
「動揺が残り、その後の対応に集中できませんでした」
● 相談(Request)
「今後の引き継ぎ方法をご相談できると助かります」
この順番なら、気持ちを抑え込まなくても「冷静に見える」形で伝えられます。
「迷惑かも」という不安を軽くするために
- 国のガイドラインでは「精神的負担を感じたら相談対象」と明記
- 相談は「弱さ」ではなく「安全を守るための行動」
- 相談しないと会社は実態を把握できず、改善が遅れる
こうした背景を知るだけで、気持ちに少し余裕が生まれるはずです。
匿名で相談できる窓口もある
- 企業内の外部相談窓口
- 企業独自のホットライン(匿名の場合も多い)
- 労働局・総合労働相談コーナー
「直属の上司にはちょっと言いづらい…」という時は、遠慮せず外部の窓口を使うのも立派な選択肢です。
管理職・リーダー層として押さえたい部下保護とチーム運営
「最近、あの子ちょっと元気ないかも…」そんな違和感を覚えた経験はありませんか。
私自身、チームを持ち始めた頃、部下の変化に気づいてあげられず後から悔やんだことがあります。
カスハラへの対策が加速していく今、「役職の大きさに関係なくできる守り方」を知っておくことは、部下の心身を守るうえでとても力になります。
ここでは、日々のチーム運営の中で実践しやすい視点をまとめました。
部下の「サイン」を見逃さないポイント
「なんとなく元気がないな」と思った瞬間って、ありますよね。
大ごとに見えない小さな変化ほど、あとから振り返ると「最初のSOS」だったりします。
私もかつて、部下が急に笑わなくなった時に「最近疲れてる?」と声をかけたら、実は顧客から連日のクレームを受けていた…ということがありました。
あの時の沈んだ表情、今でも忘れられません。
気づきやすい変化のポイント
たとえばこんな姿が見えたら、心のエネルギーが削られているサインです。
● 欠勤・遅刻の増加
「体調不良」とだけ聞いても、背景に強いストレスがあることもあります。
単発ではなく「じわじわ増える」のが特徴。
● 表情や声のトーンの変化
笑顔はあるのに、どこかぎこちない。
声が少し小さい。
休憩から戻るときの足取りが重い。
言葉にしにくい「違和感」こそ、意外と重要です。
● ミスが増える・判断が鈍くなる
普段は落ち着いている人が、急に慌てたり初歩的なミスを繰り返したり。
「ただの疲れ」ではなく、心がいっぱいになっている可能性も。
● 頑張り屋ほど言わない問題
実感として、職場の「よく気がつく人」「いつも周りに気を配っている人」ほど抱え込みます。
私の周りでも、「もっと早く言ってくれれば…」と思うケース、本当に多いです。
元気な人が急に静かになる——そんな変化は要注意。
こうしたサインに早く気づければ、次に紹介する「仕組み」でしっかり支えることができます。
部下のSOSを見つけやすいチェック項目
| 見えやすい変化 | 見えにくい変化 |
|---|---|
| ・遅刻・早退・欠勤の増加 ・ミスの増加 ・表情の硬さ | ・急に静かになる ・肩のこわばり、声のトーン ・相談回数の減少 |
| ※どれか一つでも続く場合は早期フォローが必要 | |
チームとしてカスハラに立ち向かう仕組みづくり
カスハラは「誰か一人の責任」にした途端、対応が破綻します。
とくに現場が忙しいと、「あの人が得意だから…」と属人的に任されがち。
私自身も過去働いていた職場で、特定の人にクレーム対応が集中し、休職につながったケースを見てきました。
では、実際に現場が回る仕組みとはどんなものでしょうか。
みんなで支える仕組みの例
● ひとりで抱えないルール
- 暴言や強い口調を受けたら即報告
- 対応が長引いたら自動的に上司かペア担当に引き継ぐ
- 判断を個人に任せない「逃げ道」の設定
これだけで部下の安心感は大きく変わります。
● エスカレーションの線引きを明確にする
「我慢できるレベル」
「この人はいつもこうだから」
こうした曖昧さが危険のもとです。
たとえば、
- 侮辱・威圧 → 即上司
- 同じ要求の繰り返し → 記録して日次共有
- 脅迫・営業妨害 → 管理職・コンプラ部門へ
この「基準」があるだけで、部下が判断に悩まなくなります。
● 忙しい現場でも続く運用アイデア
- 1分で書ける共有シート
日時/顧客名/状況/自分の気持ちを書くシンプルなもの。 - 問い合わせの当番制
「今日だけは後ろに味方がいる」という安心感は予想以上に大きいです。 - ヘルプカードやチャットのショートカット
「交代お願いします」の一言で助けを呼べる仕組み。
こうした仕組みを積み重ねると、チーム全体の空気が柔らかくなり、部下の表情も変わっていきます。
「会社の動きが遅いな…」と感じるときこそ、外部の力も視野に入れてみてください。
会社が動かない時の外部リソース活用
私が以前相談を受けたケースで、部下が深刻なカスハラに苦しんでいたにもかかわらず、企業がなかなか動いてくれなかったことがありました。
最終的に外部の相談窓口につないだことで事態が大きく動いたのですが、「もっと早く相談すればよかった」とご本人が涙ぐんでいたのを今でも覚えています。
外部の窓口は、「いざという時のセーフティネット」としてとても頼りになります。
利用できる外部の支援
● 労働局の総合労働相談コーナー(無料)
全国どこでも相談可能で、顧客対応のトラブルにも丁寧に応じてくれます。
● 産業医・外部EAP(従業員支援プログラム)
産業医がいる会社なら、心身の負担について意見書を出してもらえることも。
EAPなら匿名相談ができることも多く、心理的ハードルが低くなります。
● 弁護士への早期相談
脅迫や悪質クレームなど、明らかに危険度が高いケースは法的視点が必要です。
「会社がどこまで対応すべきか」が明確になり、部下の安心材料にもなります。
「遠慮しない」という選択肢
顧客のために無理をしても、その負担はあなた自身に返ってきます。
外部に頼ることは、「会社に迷惑をかける行為」ではなく、あなたと部下を守るための正しいアクションです。
外部の支援先を知っているだけで、判断に迷う場面がぐっと減ります。
そして最後に目指したいのは、チームの中に「助け合うのが当たり前」という空気が育つこと。
その土台があれば、カスハラが増える時代でも、安心して働ける環境がつくれます。
外部リソースの比較一覧
| 外部機関 | 相談内容の例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 労働局相談コーナー | カスハラ・職場環境 | 無料、匿名OK |
| 産業医 | 心身の不調相談 | 意見書で企業対応を促せる |
| 弁護士 | 脅迫・営業妨害などの強度案件 | 法的見解で対策が明確になる |
まとめ:義務化は「あなたを守る仕組み」が整うチャンス
カスハラ義務化の流れは、新しい負担を押しつける話ではありません。
むしろ、「もっと安心して働いてほしい」というメッセージが制度として形になる、とても大きな節目だと感じています。
これまで、顧客対応は「気合いで乗り切るもの」のように扱われることも多く、肩に力が入りがちな空気が職場にはありましたよね。
国が明確に「守るべき」と示すことで、その空気が少しずつ変わり始めています。
つい自分のしんどさを後回しにしてしまう人ほど、この流れをうまく味方につけてほしいと思います。
そして、「会社はすぐには動かないかも…」と感じても、そこで思考停止する必要はありません。
労働局の相談窓口や産業医、外部の専門機関など、頼れる場所は静かに、でも確かに存在しています。
こうした窓口を知っているだけで、心の中にふっと灯りがともるような安心感が生まれ、次の行動につながりやすくなります。
あなたの声は小さくても、職場のルールづくりのきっかけになることがあります。
無理を積み重ねるよりも、「もっと健やかに働きたい」という自然な気持ちを大切にしてほしいです。
義務化の流れは、「安心して働ける未来」をつくっていくための追い風です。
どうかこの変化を、あなた自身の力になる方向へつなげてください。
- 2025〜2026年の義務化は「企業が従業員を守る体制を整えること」を強く求める流れ
- 部下のSOSは「行動の変化」に表れやすく、早期発見が最も重要
- 自社が動かない時は、外部相談窓口・産業医・法的相談を遠慮なく使うべき
よくある質問と回答
- カスハラを受けた時、録音やメモはしておいた方がいいですか?
-
はい。
事実を客観的に残すことは、会社や外部機関に相談する際に非常に役立ちます。録音が難しい場合は「日時・発言内容・自分が感じたこと」を簡潔にメモしておくと十分です。
- 顧客からのカスハラが「売上の大きい取引先」の場合でも、対応してもらえますか?
-
本来、企業は取引規模に関係なく従業員を守る義務があります。
むしろ強度の高いカスハラほど、記録とエスカレーションの徹底が欠かせません。
- 管理職ではない一般社員でも、義務化でできることはありますか?
-
あります。
共有シートへの記録、無理な要求があった際の早期報告、外部窓口の利用など、「自分の身を守る行動」は誰でも取れます。立場に関係なく使える仕組みが義務化のポイントです。

