職場の5割が被害経験？今知るべきパワハラ実態と自分を守る方法

Q: パワハラかどうか判断できないときは、どこに相談すればいい？

社内の相談窓口、人事、コンプライアンス部門 が最初の選択肢です。 会社内で動きづらい場合は、労働局の「総合労働相談コーナー」が無料で利用できます。

Q: 記録はどんな形式で残すと有効？

メモでもスマホのメモでも構いません。 日時・場所・言動の具体的内容・関係者を残す のが重要で、可能なら メールやチャット履歴 など客観的証拠も保存しましょう。

Q: 加害者とされる側が気をつけるべきことは？

指導の 目的・方法・頻度が適切か を確認することです。 同じ内容でも「言い方」で受け取り方が大きく変わるため、 冷静で一貫性のあるコミュニケーション が大切です。 あわせて読みたい パワハラにならない注意の仕方：女性管理職が実践している言い換え例 注意＝叱責ではありません。この記事では、パワハラにならずに信頼関係を育む注意の言い方・フォローの工夫を、具体例付きで解説します。

2025年12月13日

「もしかして、これってパワハラ…？」
私自身、かつて職場で同じ疑問を抱え、帰り道の電車で何度もため息をついたことがあります。
誰に話せばいいのかも分からず、「私の気にしすぎかな」と自分の気持ちにフタをしていた時期がありました。

最近の調査では、半数以上の人がパワハラを経験したと答えています。
決してドラマの中だけの話ではなく、日々の会議やチャットの一言、残業の指示など、身近な場面で静かに起きている出来事なんだとあらためて感じます。

とはいえ、人間関係が複雑な職場では、「波風を立てたくない」「仕事がやりづらくなるかも」と立ち止まってしまうのも当然です。

この記事では、そんな迷いや不安を抱えている方に向けて、数字から見える現実と、今日からできる小さな行動をそっと差し出します。
少しでも息がしやすくなるきっかけになりますように。

こんな方におすすめ

上司や同僚の言動に「これって普通？」と不安を感じている方
職場のパワハラが「どこから該当するのか」整理したい方
我慢して働き続けるべきか迷っている方
相談窓口や対処の方法を知りたい方
部下を持つ立場として、無意識に加害者にならないための基準を学びたい方

この記事を書いた人：神崎ようこ

特定社会保険労務士・FP
労務管理とライフプラン設計の専門家。
これまでに延べ1,000件以上の相談に対応し、企業の人事労務課題から働く女性の資産形成まで幅広く支援しています。
昇進試験の支援や老後資金・介護準備など、働く女性が直面する課題を解決へ導く記事を執筆しています。

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30〜40代で起きやすい、あの「言葉にしづらい圧」について

パワハラと聞くと、怒鳴られたり露骨に無視されたり…そんな場面を想像しがちですよね。
でも実際には、もっと静かで、もっと日常の中に紛れています。

私自身、30代の頃に「これって普通なのかな？」と飲み込んでしまった経験があり、そのときは自分の感じ方に自信が持てず、妙に胸がざわついていました。

最近の調査では、働く女性の半数以上が何らかのパワハラを経験していると言われています。
数字だけを見るとショックですが、「特別な出来事」ではなく、私たちが置かれている環境そのものに背景があるのかもしれません。

パワハラ経験率（最新調査イメージ）

項目	割合
パワハラを経験した	52%
経験していない	48%

この年代は、仕事の場面でも家庭の場面でも「頼られる側」になることが増えます。

職場では後輩のフォローを任され、上からは「もうこのくらいできるよね」と暗黙の期待を向けられ、気づけば両端を引っ張られるような感覚になることも。
私も以前、会議の帰り道に「どっちに合わせればいいんだろう」とため息が漏れた瞬間がありました。

そして、育児や家族のサポートが重なると、なおさら弱音を飲み込みがちになります。
「これ以上は抱えられません」と言いたい気持ちがあっても、世間の空気やSNSでの「理想の働き方」に押されて、つい自分の気持ちを後回しにしてしまう…。

最近よく見かける「ワンオペ」「名もなき家事」という言葉は、こうした背景を映し出しているのかもしれません。

たとえば、こんな朝を迎えたことはないでしょうか。

出社前からお腹が重い。理由は、上司の機嫌が読めないから。
明らかに仕事量が多いのに、「子どもがいるから無理と言われたくない」と言えず、そのまま引き受けてしまう。
チーム全体がピリッとしていて、空気を壊したくなくて笑顔でごまかす。

こうした小さな違和感は、雪のように静かに積もります。
気づいたら心のどこかが冷えてしまっている。
そんなケースは本当に多いんです。

ただ一つ、どうか誤解しないでいただきたいのは——
あなたが弱いからパワハラを受けているわけではないということ。

環境的に声を上げにくい状況に置かれている人が多いからこそ、経験者がこんなに多いのです。
「私に原因があるんじゃ…」と思い込みすぎる必要はありません。
むしろ、その感覚こそが健全なサインです。

次は、そんな「曖昧さ」がどうして生まれてしまうのか、もう少し踏み込んでお話しします。

指導とパワハラ、その線がぼやけてしまう理由

私が以前、ある先輩に強い口調で注意されたとき、「これは指導だから」と自分に言い聞かせながら帰宅したことがあります。

でも、家に着いた途端に涙がこぼれてきて、「あれ、本当に指導だったのかな…」と不安に襲われました。
こんなふうに、「線引きの難しさ」を感じた経験のある方は多いのではないでしょうか。

30〜40代の働き手は、どうしても「迷惑をかけたくない」「自分がもう少し頑張れば丸く収まる」と抱え込みがち。
そうなると、強い口調で言われても「業務だから仕方ない」と自分を納得させてしまうクセがついてしまいます。

一方で、上司側も余裕がないことが増えています。
最近は多くの会社で目標管理が厳しく、ニュースでも「管理職のメンタル負荷」「職場の人手不足」が取り上げられるほど。

上のストレスがそのまま下に流れるように、語気が強くなったり、行き過ぎた指示が出やすい土壌ができているのです。

では、何を基準に考えればよいのでしょうか。
厚生労働省が示している目安では、次のような行為は「指導」とは言えません。

人格まで否定するような言葉（例：「使い物にならない」「やる気ある？」など）
現実的に不可能な仕事量を押しつける
必要な情報を意図的に伝えない、打ち合わせから外す

一つでも当てはまるなら、それはあなたの感じ方が大げさなのではなく、状況そのものに問題があります。

そして何より伝えたいのは——
「つらい」と感じたあなたの気持ちは、ちゃんと理由のある自然な反応だということ。

その感覚を無視せず、そっとすくい上げてあげてください。

次は、「じゃあ実際どうすればいい？」という疑問に応えながら、今日からできる一歩を紹介していきます。
ここから先は、あなたを守るための具体的な話になります。
どうか気負わずに読み進めてみてください。

よく見かけるパワハラのパターンと、気づきにくい日常のサイン

パワハラという言葉を聞くと、「怒鳴られる」「きつい叱責」など、ドラマで見るような場面を想像しがちですよね。
でも、実際に寄せられる相談の多くは、もっと静かで、もっと日常と一体化した出来事です。

だからこそ判断しづらく、人知れず抱えこんでしまう人が後を絶ちません。

私自身、30代のころに「これってただの厳しい指導…なのかな？」と飲み込んでしまった経験があります。
強く言われたわけでもないのに、胸の奥にじんわり重さが残る。

そんな「静かな負荷」が何日も続くと、心が削れていく感覚がありました。

今、働き方が大きく変わっている時代です。
コロナ禍を経てリモート・出社の混在も当たり前になり、人間関係が見えづらくなったことで、気づかぬうちに負担が積み重なるケースも増えています。

その中でも、特に30〜40代の女性が受けやすいのは、目立たないのに確実に疲弊させる「静かなパワハラ」。
表面的にはトラブルに見えないため、「特別扱いされたくない」という気持ちが働き、つい耐えてしまうのです。

ただ、この「耐え続ける」は長くはもちません。
無理を続けていた頃、私はいつの間にか夜中に何度も目が覚めたり、朝起きると胃がキュッと縮む感覚がありました。
身体は正直です。

まずは、いまの状況がパワハラに当たるのか判断しやすいよう、厚生労働省の基準を踏まえつつ、代表的なパターンを紹介していきます。
「これ、少し似てるかも…」と思いながら読んでみてください。
気づきにくいサインが見えてくるはずです。

パワハラの主な類型

類型	具体例
精神的な攻撃	大声での叱責、人格否定、侮辱的な発言
過大な要求	明らかに不可能な量の仕事を押し付ける
過小な要求	能力に見合わない単純作業のみを与える
人間関係からの切り離し	会議・連絡網から意図的に外す
個の侵害	私生活への過度な介入や監視

精神的な負荷をかける言動（きつい口調・人格に触れる表現）

相談の中で最も多いのが、言葉を使った精神的な攻撃です。

と言っても、あからさまな暴言だけが対象ではありません。
日常の中にふと混じる「トゲのあるひと言」や、「ため息交じりの注意」も、積み重なるとしっかり傷になります。

たとえば、こんな言動です。

「どうしてこんなこともできないの？」と人格に触れる言い方
必要以上に長い叱責。周囲が気づくほど強い口調
「向いてないんじゃない？」という否定的な評価
過去のミスを何度も持ち出される

これらを受けたとき、多くの女性が最初に抱くのは「私のせいかもしれない」という自責の気持ち。
時間に追われていたり、真面目に働くタイプほど、自分の内側に原因を探してしまう傾向があります。

でも、これは「被害者が抱きやすい典型的な反応」です。
あなたが悪いわけではありません。

精神的な攻撃が続くと、判断力が落ちたり、仕事に対する恐怖感を抱いたり、メンタル面の不調が現れやすくなります。

私も当時、「ミスしちゃいけない」と気負いすぎて、いつも手が震えていました。

ここからは、こうした精神的負荷が生まれやすい背景を、業務量に関するパワハラへつなげていきます。

過大・過小な業務の押しつけ

近年増えているのが、「業務量の偏り」に関するパワハラです。
とくに、家庭と仕事を両立している女性はターゲットになりやすく、極端な扱いを受けるケースが目立っています。

極端に多い仕事を押しつけられる

「経験があるから」「あなたならできる」という言葉で、大量の仕事を渡されるパターンです。

私の知人は、育児中にもかかわらず深夜のトラブル対応を任され続け、「私がやらないと回らない」と思い込んでしまっていました。
気づけば休日も連絡に追われ、心も体も限界寸前に。

逆に、責任ある仕事を外されてしまう

一方で、家庭の事情を勝手に理由にされ、「雑務ばかり」「会議に呼ばれない」といった「過小な扱い」をされることも。
本人が望んでいないのに、キャリアの機会を奪われてしまう、れっきとしたハラスメントです。

どちらにも共通しているのは、本人の意思と無関係に「極端な扱い」をされる点です。
この状況が長引くと、心の疲れだけでなく、昇進・評価にも影響が出てしまいます。

では、業務量が偏ると次に何が起きるのか――。
それが、次に紹介する「孤立させるパワハラ」です。

孤立させる・情報を渡さない

特に30〜40代が巻き込まれやすいのが、「孤立させるタイプ」のパワハラです。
暴言がないため気づきにくいのですが、相談件数は非常に多く、じわじわ心を削る行為でもあります。

たとえば、こんな状況です。

会議の予定が共有されない
必要な情報や資料だけ自分に渡されない
同じチームなのに、あなたにだけ連絡が遅い
プロジェクトから外される、意見を求められない

こうした「情報の偏り」は、ミスを誘発し、評価を下げる原因になります。
私も一度、会議の連絡をもらえず「なぜ来なかったの？」と言われたことがありました。
悔しさより先に、体からスッと血の気が引いたのを覚えています。

孤立が続くと、「必要とされていないのかも」と感じ、自己肯定感が急激に下がってしまいます。

この年代が孤立させられやすいのは、部署の調整役や周囲のつなぎ役として働くことが多いため。
どこかの誰かにとって「不都合な存在」になってしまったとき、標的にされやすいのです。

孤立させられるパワハラは、気づいた頃には深刻化していることが多いもの。
だからこそ、いまの違和感に名前をつけることが、最初の大切な一歩です。

自分を守るために「今日からそっと始められる」対処の第一歩

パワハラの相談を受けていると、よく耳にする言葉があります。
「どう動けばいいのか、正直まったく分からなくて……」。

分かります。
相手が上司だったり、もとは仲の良かった同僚だったりすると、ただ一歩踏み出すだけなのに、足元がぐっと重くなるんですよね。

家庭のこともあるし、転職なんて現実的に考えにくい。
そんな不安を抱えたまま、通勤電車に揺られている方は本当に多いです。

私自身も、昔「このまま続けたら心が潰れそう」と感じた時期がありました。
でも、当時の私は「何かしなくちゃ」と焦るばかりで、結局、何から始めればいいのか見当がつかずにいました。
今振り返ると、最初にやるべきことはもっと静かで、もっと自分にやさしい行動でした。

それは「戦う準備」ではなく、「自分を守る土台づくり」です。
誰にも知らせずに、今日からそっと始められるもの。

大きく分けると、この３つです。

事実を記録する
相談ルートを知っておく（準備だけでも十分）
味方をつくる（職場でも、職場の外でも）

どれも難しいことではありません。
むしろ、今の疲れた気持ちを少しだけ軽くするための「小さな灯り」のような行動です。

「記録して何か変わるの？」
「相談したら一気に大ごとになるのでは？」

そんな不安に寄り添いながら、一つずつ丁寧に案内していきますね。

事実を記録する（メモ・メールの保管・行動の記録）

最初の一歩として取り組みやすいのは、淡々と「事実を残すこと」です。
これは、感情を抑え込むという意味ではありません。
むしろ、感情が揺れた日こそ記録が助けになります。

記録は、あとで振り返った時の「自分だけの地図」のような存在になります。
心が迷ってしまいそうなときに、「あの日、私はこう感じて、こう動いた」と軌跡を確かめられるので、気持ちが整理されやすくなります。

残しておきたいポイントは、次の４つです。

日付・場所・状況
相手の具体的な言葉
その後の影響（体調・仕事への支障）
メールやチャットのスクショ（そのまま保存）

たとえば、こんな感じです。

2025/12/10（水）14:10 会議室A
課長が「こんなレベルなら仕事を任せられない」と発言。
会議後、動悸と頭痛。
15:00に保健室で休憩。

一見そっけない記録ですが、こういう積み重ねが未来のあなたを守ります。

特に最近は、オンライン会議やチャットが増え、言葉のやりとりがデジタルに残りやすくなりました。
スクショを撮っておく、PDFで保管しておく ──それだけで状況はずっと把握しやすくなります。

「書いたところで状況は変わらないのでは？」
そう思う瞬間、ありますよね。

でも、記録は「あなたの味方」です。
相談するとき、状況を説明しやすくなるだけでなく、心の整理にもつながります。

社内の相談ルートを知っておく（総務・人事・相談窓口など）

相談というと、「会社と対立する勇気が必要」と思われがちですが、実はそんなことはありません。
話を聞いてもらうだけでも、心の重さが半分くらいへることもあります。

会社には、たとえば次のような相談窓口があります。

人事部・総務部
ハラスメント相談窓口（最近は企業の公式サイトに情報を載せているところも増えました）
産業医・保健師

厚生労働省が定めている制度の整備も進んでいて、相談した人に不利益が出ないよう守秘義務も設けられています。
私もはじめて相談したとき、「ただ話しただけでこんなに呼吸が楽になるんだ」と驚いたほどです。

相談するときは、次の3つを意識してみてください。

「訴える」のではなく、「事実の確認だけお願いしたい」と伝える
感情ではなく、記録した事実を見せたほうが話がスムーズ
話す内容を事前にメモしておくと、緊張しても落ち着いて話せる

相談＝大ごと、ではありません。
「準備しておく」だけで、心の逃げ場がひとつできる。
そんな感覚に近いと思います。

味方をつくる（同僚・社外相談・専門機関）

パワハラのつらさを深刻化させる最大の原因は、「ひとりで抱え込むこと」です。

私もそうでした。
「私が弱いだけかもしれない」と思い込み、誰にも言えずにいた時期があります。
でもある日、同僚にぽつりと話したら、「それ、あなたのせいじゃないよ」と言われ、涙が止まらなくなりました。

味方は、職場の内側にも外側にもつくれます。

社内の味方

信頼できる同僚
落ち着いて話を聞いてくれる先輩
チーム外で公平に見てくれる人

声に出した瞬間、心の中に溜まったものが整理されていくことがあります。

社外の相談先

外部には、あなたの状況を中立の立場で受け止めてくれる場所がたくさんあります。

総合労働相談コーナー（全国379か所）
自治体の相談窓口
NPOの労働相談
弁護士会の無料相談（初回無料のケースが多い）

最近はオンライン相談も充実し、「職場に知られずに話せる」点が、精神的な安全につながっています。

「こんなことで相談してもいいのかな？」
大丈夫です。
むしろ、違和感の段階で相談するほうが、状況をこじらせずに済みます。

味方がひとりでもできると、不思議と心が軽くなり、「次の一歩」が見えるようになります。
そしてこの味方づくりは、あなたが望めば今日から始められます。

対処の3ステップ

ステップ	内容
1. 記録を残す	日時、発言内容、状況をメモ化
2. 相談する	上長、人事、相談窓口、外部機関など
3. 制度を利用する	会社の相談制度、休職制度、労基署相談など