40代の方にとって、介護はまだまだ先の話に思えるかもしれません。
けれど、親のちょっとした転倒や体調の変化は、ある日突然やってきます。
そんなとき、介護保険のことを少し知っているだけで、慌てずに動ける自分になれるんです。
本記事では、介護保険の基本から、いざというときに役立つ備え方まで、整理してお届けします。
- 親の老後や介護がぼんやりと気になってきた方
- 介護保険制度が複雑でとっつきにくいと思っている方
- 何から調べればいいか分からない方
- 自分が何歳から関係するのかも知らない方
介護保険ってどんな制度? ざっくり全体像をつかもう
介護保険は「65歳からの高齢者のための制度」と思われがちですが、実は40歳以上の人が保険料を支払う仕組みであり、自分自身も対象者になる可能性がある制度です。
ここでは、介護保険の目的や仕組み、財源、加入者の区分(第1号被保険者・第2号被保険者)など、基本的な部分を紹介します。
「介護保険? うちはまだ関係ないでしょ」
私も、そう思っていました。
親はまだ元気だし、介護といえば遠い未来の話。
でも実は、介護保険は65歳以上の親世代だけのものではありません。
40歳を過ぎた私たちも、すでに立派な「加入者」で、給与や年金から保険料をしっかり納めています。
では、そもそも介護保険は何のためにあるのでしょうか。
目的はシンプルで、「高齢になって介護が必要になったとき、誰もが安心して必要なサービスを受けられるようにすること」です。
財源は、国や自治体が負担する公費と、私たち加入者の保険料で成り立っています。
加入者は2つに分かれます。
- 第1号被保険者
65歳以上。介護や支援が必要と認められれば、原則すぐに使える。 - 第2号被保険者
40〜64歳。
若年性認知症や脳血管疾患など、厚生労働省が定める特定疾病にかかった場合のみ利用可能。
つまり、まだ若いと思っていても、突然の病気で自分が介護サービスの対象になる可能性もゼロではないんです。
では、介護保険はどんなときに使えるのでしょうか。
基本は「要介護」または「要支援」の認定を受けたときです。
65歳以上なら、転倒や骨折、認知症などで日常生活に支援が必要だと判断されれば、介護サービスを受けられます。40〜64歳の場合は、対象となるのは特定疾病に限られますが、それでも「もしも」は突然やってきます。
たとえば、私の友人のパートナー(42歳)が突然の脳梗塞で倒れたことがありました。
幸い回復はしましたが、しばらくは生活に支援が必要になり、介護保険の申請をすることになったそうです。
40代でも無関係ではない、と実感した出来事でした。
ここまで読んで、
「なるほど、思ったより身近な制度なんだ」
「自分の家でも、急に必要になるかも…」
そんなふうに感じた方も多いはずです。
親の介護は、ある日突然やってきます。
近所でも、「昨日まで元気だったのに骨折して入院、そのまま在宅介護に」という話は珍しくありません。
だからこそ、「誰が、どんな手続きで、どんなサービスを使えるのか」を知っておくことは、未来の安心につながります。
次は、介護保険で実際にどんなサービスが受けられるのかを、具体的にご紹介します。
「施設に入れることだけが介護じゃない」という視点が持てると、少し肩の力が抜けますよ。
介護保険で受けられる5つの主なサービス
「実際にどんなサービスが使えるの?」という疑問に答えるパートです。
親の介護を具体的に考え始めたときに、「施設に入れる以外の選択肢」を知ることで安心感が生まれます。
「親が介護を必要になったら、すぐ施設に入れなきゃいけないのかな……」
そんな不安を抱いたことはありませんか?
私も、母の足腰が弱ってきたときに同じ気持ちになりました。
ニュースで「老老介護」「介護離職」といった言葉を聞くたびに、胸がざわついたのを覚えています。
でも実際には、介護保険で受けられるサービスは、施設だけではありません。
訪問や通所など、家での暮らしを支える選択肢もたくさんあります。
ここでは、暮らしを無理なく支えてくれる5つの代表的なサービスを、費用感や利用のコツとあわせてご紹介します。
訪問介護(ホームヘルパー)
一番身近なのが、ホームヘルパーによる訪問介護です。
ヘルパーさんが家まで来て、掃除・洗濯・調理などの家事や、入浴や着替えといった身体介護をサポートしてくれます。
私の母は、最初は週1回、2時間だけ掃除と買い物をお願いしました。
それだけでも、家族みんながホッと一息。
「今日はプロに任せられる」という安心感は想像以上でした。
費用は1回あたり数百円〜数千円程度(自己負担1割の場合)。
ただし、同居家族が日常的にできる家事は対象外になることもあるので、事前にケアマネジャーに確認すると安心です。
通所介護(デイサービス)
「家にこもりがちな親に、刺激や楽しみを持たせたい」と思ったらデイサービスがぴったり。
送迎付きで施設に通い、入浴・昼食・体操・レクリエーションなどを受けられます。
母もデイサービスで編み物クラブや健康体操に参加するようになってから、表情が明るくなりました。
特に、他の利用者さんとおしゃべりして笑う時間は、心の薬のようです。
利用料は食事代込みで1日1,000円〜2,000円程度(自己負担1割の場合)。
週1回から利用できるので、在宅介護の強い味方になります。
短期入所(ショートステイ)
家族が旅行や出張で家を空けるときや、少し休みたいときに便利なのがショートステイ。
数日〜数週間、施設で親を預かってもらえます。
母を初めてショートステイに預けたとき、正直なところ罪悪感がありました。
でも帰ってきた母は「温泉旅行みたいで楽しかった」と笑顔。
今では家族の心と体のリフレッシュにも欠かせない存在です。
費用は1泊2日で2,000円〜5,000円程度(食費・居住費込み、自己負担1割の場合)が目安です。
福祉用具レンタル・住宅改修
自宅で介護を続けるなら、安全な環境づくりが欠かせません。
手すりの設置や段差解消、ベッドや車いすのレンタルも、介護保険でサポートされます。
我が家では、廊下に手すりをつけただけで、母の転倒が激減しました。
住宅改修は最大20万円まで保険で補助されるので、思ったより家計への負担も軽く済みます。
福祉用具のレンタルは月数百円から利用可能。
必要なくなれば返すだけなので、無駄がありません。
施設サービス(特養・グループホームなど)
自宅での生活が難しくなったら、特別養護老人ホーム(特養)やグループホームといった入所施設の選択肢もあります。
母の友人は、認知症が進んでグループホームに入居しました。
少人数の家庭的な雰囲気で過ごせることが心地よく、「ここが私の第二の家」と話していたそうです。
費用は食費・居住費込みで月7万〜15万円程度が目安。
所得に応じた補足給付が受けられる場合もあるので、負担が心配な場合は役所で相談してみてください。
介護保険サービスは、この5つだけでも日常を大きく支えてくれます。
「施設に入れるしかない」と思い込む前に、在宅と施設を上手に組み合わせる。
それだけで心の重さが少し軽くなりますよ。
次は、「実際に介護保険を使うには何から始めればいいのか?」に踏み込みます。
要介護認定やケアマネジャーとの関わり方を知ることで、いよいよ具体的な一歩が踏み出せます。
40代から関係ある? 介護保険の「自分ごと化」ポイント
「まだ親も元気だし、正直ピンとこない…」とい方向けに、40代の今だからこそ意識しておくと良いことを紹介します。
「介護保険なんて、親がもっと年を取ってからの話でしょ?」
私も、つい数年前まではそう思っていました。
母は元気で旅行にも行くし、父は毎朝散歩が日課。
どこかで「うちはまだ大丈夫」と信じ込んでいたんです。
でもある日、母が自宅で転んで骨折し、入院生活が始まりました。
退院後にはリハビリが必要で、そこで初めて「介護保険を申請してください」と病院のソーシャルワーカーに言われた瞬間、頭が真っ白になりました。
「え、今から何をすればいいの?」
このとき心底思ったのは、「もっと早く流れを知っておけばよかった」ということでした。
介護は、ある日突然やってきます。
だからこそ、親が元気なうちから知っておくことが、家族みんなの安心につながります。
ここでは、40代のうちに押さえておきたい「自分ごと化」ポイントを3つに分けてお伝えします。
親が要介護状態になったときの申請手続き
まず大事なのは、介護保険は申請しないと使えないということ。
親が骨折で入院したり、物忘れが目立ってきたりして「そろそろ介護サービスを…」と思っても、申請なしには何も始まりません。
申請先は、親が住んでいる市区町村の役所や地域包括支援センターです。
家族が手続きできますが、病院のソーシャルワーカーやケアマネジャーが代行してくれることもあります。
必要書類は、介護保険被保険者証、申請書、本人確認書類。
場合によっては印鑑も必要です。
私の場合、退院前のバタバタの中で書類を探し回りました。
母の保険証はどこ? 印鑑はどっちの印を持っていけばいいの? そんな小さなことで慌てるんですよね。
だからこそ、親が元気なうちに被保険者証の保管場所や、地域包括支援センターの連絡先を確認しておくだけでも安心感が違います。
知っておきたい「要介護認定」の流れ
申請の次は「要介護認定」です。
介護保険は、必要な介護の度合いで受けられるサービスや自己負担が変わる仕組み。
認定までの流れをざっくり把握しておくと、いざというとき慌てません。
- 訪問調査
市区町村の調査員が自宅に来て、立ち上がりや歩行の様子、会話や記憶の状態などを確認します。 - 主治医の意見書
病院の医師が、病状や生活の様子について書類を作成します。 - 審査会で認定
訪問調査と意見書をもとに、要支援1〜2、要介護1〜5のいずれかに認定されます。
申請から認定まではおよそ30日程度。
つまり、親が急に介護を必要としても、すぐにサービスが使えるわけではないんです。
私も、母の退院日に合わせてショートステイを利用したかったのですが、認定が間に合わず焦った経験があります。
こうした経験から実感したのは、「手続きの流れを事前に知っておくことが、家族の安心を守る」ということでした。

40代でも介護保険を使うことがある?
「介護保険は親のためのもの」
そう思っていませんか?
実は40歳〜64歳の私たちも「第2号被保険者」として保険料を払っていて、一定の病気なら自分がサービスを使うこともあります。
対象となるのは、若年性認知症、脳血管疾患(脳梗塞やくも膜下出血など)、がんの末期など16種類の特定疾病です。
実際、40代後半で若年性認知症と診断され、訪問リハビリやデイサービスを活用している方もいます。
この事実を知ると、介護保険は「親のためだけじゃなく、自分の暮らしを守る制度」と実感しますよね。
毎年の健康診断や生活習慣の見直しにもつながり、もしものときも落ち着いて動けるようになります。
介護保険は、遠い未来の話ではありません。
「まだ早い」と思う40代だからこそ、申請の流れや認定の仕組みを知っておくことが、いざというとき家族を守る力になります。
次は、介護保険でカバーできない費用と備え方を紹介します。
制度の限界を知っておくことは、未来の家計と心の余裕に直結しますよ。
介護保険でカバーできない費用と、その備え方
介護保険はとても心強い制度ですが、「魔法の保険」ではありません。
実際には自己負担や保険外の支出も多く、思った以上に家計への影響が大きくなることもあります。
ここでは、制度に期待しすぎないために知っておきたい費用の実態と、備えのヒントを紹介します。
「介護保険があるから、お金の心配はそんなにいらないでしょ?」
正直、私も母の介護が始まるまではそう思っていました。
けれど、最初の請求書を見たとき、胸の奥がヒヤッとしたのを覚えています。
「えっ、こんなにかかるの?」
介護保険は確かに頼もしい制度ですが、すべてをカバーしてくれるわけではありません。
ここからは、私の経験も交えながら、カバーできない費用とその備え方を見ていきましょう。
利用者負担(原則1~3割)と月々の実費例
介護保険サービスは、基本的に自己負担1割(一定の所得がある場合は2~3割)で利用できます。
たとえば、週2回の訪問介護と週1回のデイサービスを組み合わせると、自己負担はおおよそ月1万円前後。
数字だけ見ると「意外と安いかも」と思うかもしれません。
でも、介護度が上がれば利用回数も増えます。
私の母は要介護2で、デイサービス週2回+訪問リハビリ週1回を使ったとき、月2万2千円ほどかかりました。
リハビリ型のデイサービスや入浴付きサービスだと、1回あたりの料金が上がることもあります。
「保険でほとんどまかなえる」というイメージは、現実とは少し違うんです。
食費・居住費・おむつ代など、介護保険外の費用
さらに見落としがちなのが、保険外の費用です。
たとえば施設に入る場合、介護サービスの費用は保険でカバーされても、食費や居住費は全額自己負担。
特別養護老人ホームなら月5万~8万円、有料老人ホームでは月15万~20万円かかることもあります。
自宅介護でも安心はできません。
おむつやパッドは月5千円~1万円程度。
通院や送迎にかかる交通費も積み重なります。
母の介護を始めたとき、月々の支出がじわじわ増えていくのを感じて、「これは長期戦だな」と覚悟しました。
介護費用が家計に与えるインパクト
厚生労働省の調査によると、在宅介護は平均で月3万~5万円、施設介護は月15万円前後が目安です。
親の年金で賄えなければ、子世帯の家計にも影響が出ます。
私の知人は、母親を施設に入れたことで毎月5万円の仕送りが必要になり、旅行や外食の回数を減らしたそうです。
「まだ先の話」と思っていた介護が、ある日突然、家計にのしかかることは珍しくありません。
介護保険外で頼れる民間保険・貯蓄・家族の話し合い
では、どう備えればよいのでしょうか。ポイントは3つです。
- 民間の介護保険や医療保険の活用
介護状態になったときに一時金や年金形式で給付される保険があります。
私は母の介護を経験したあと、自分用に「一時金型介護保険」に加入しました。
少しの安心が、心の余裕につながります。 - 貯蓄と生活費のシミュレーション
月いくらなら負担できるか、施設入居の初期費用(50万~100万円が目安)も含めて計算しておくと現実的です。
金融庁の「ライフプランシミュレーター」や、「おやろぐ」の「介護費用かんたん診断」も役立ちます。 - 家族で話し合うこと
介護費用を一人で抱えると負担が大きくなります。
兄弟姉妹や配偶者と早めに話し合い、費用分担や意思決定のルールを共有しておくと安心です。
あいまいにしたままだと、のちに誤解やトラブルにつながりやすいのです。
介護保険は、家族を支えてくれる心強い制度です。
でも、すべてをカバーしてくれるわけではありません。
「自己負担や保険外費用を現実的に知り、少しずつ備えること」が、家族も自分も守る第一歩です。

まとめ:知っておくだけで、いざというとき慌てない
「介護なんてまだまだ先」と思う40代こそ、少し知っておくだけで、心の余裕がまったく違います。
知識は、未来の安心につながる「心の防災グッズ」。
今回のまとめでは、その大切さをお伝えします。
「介護なんて、まだまだ先の話でしょ」
「親も元気だし、考え始めるのは早すぎるかな」
……そう思うのは、私もまったく同じでした。
介護はどこか遠い世界の話。
週末に両親とランチに行き、元気に笑っている姿を見ては、「まだまだ大丈夫」と安心していたんです。
でも、ある冬の朝、母が自宅で転んで骨折し、突然の入院。
電話口で医師に説明を受けながら、頭の中は真っ白になりました。
最初に浮かんだのは、「何から手をつければいいの?」という不安だけ。
このとき初めて、「知っておく」ことの大事さを痛感しました。
介護保険は「親のため」であり「自分のため」の制度
いざというとき、手続きを進めるのは私たち子ども世代です。
親が元気なうちに制度の流れを知っておけば、突然の入院や退院、在宅介護の準備にも慌てません。
たとえば、親が転倒して入院したら——
- 要介護認定の申請
- ケアマネジャー探し
- 自宅の安全対策や福祉用具の手配
この流れを知らなければ、退院日を前に右往左往することになります。
逆に、ほんの少しでも知識があるだけで、「じゃあ次はこれをやればいい」と落ち着いて行動できるんです。
家族で話し合うことが「安心の種」になる
介護は、突然やってくることがあります。
心の準備がないまま始まると、迷いや衝突が増えがちです。
我が家も母の入院をきっかけに、初めて家族会議を開きました。
- 母の希望:「できるだけ家で過ごしたい」
- 私たち子世帯の事情:「日中は仕事でつきっきりは無理」
この「すり合わせ」ができたことで、デイサービス+訪問介護という選択肢を早めに検討できました。
家族で話すだけでも、心にゆとりが生まれます。
「準備=大げさ」ではない
介護の知識や手続きを少し理解しておくことは、家族を守るための心の防災グッズです。
地震の非常食のように、使う日が来ないならそれが一番。
でも、いざというときには、安心感として大きな力を発揮します。
今日からできる小さな一歩は、こんなことでも十分です。
- 親に「介護保険証ってどこにあるの?」と聞いてみる
- 自治体の介護保険窓口や公式サイトをのぞいてみる
- 家族に「もしものときどうしたいか」を軽く話す
たった5分の行動が、未来の自分を大きく助けます。
介護は、ある日突然やってくることもあります。
でも、知っているだけで慌てずにすむ未来を、私たちはつくることができます。
今日の小さな準備が、明日の大きな安心につながります。
不安を少しずつ、準備できている安心に変えていきましょう。