介護が始まる前に知っておきたい「介護準備チェックリスト」10項目

介護が始まる前に知っておきたい「介護準備チェックリスト」10項目
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介護は、始まってみないとわからない大変さがあります。
体力面だけでなく、心への負担は想像以上。

特に女性は、家事や感情のケアまで一手に担いがちで、孤立や燃え尽きに陥る人も少なくありません。

本記事では、介護を始める前に整えておきたい「準備」のポイントを、実例とともにわかりやすく解説します。

  • 親や配偶者の体調に不安を感じている方
  • 介護経験がなく、何から始めていいかわからない方
  • 精神的・経済的負担が心配な方
  • 仕事や家庭との両立に不安がある方
神崎ようこ
神崎ようこ

この記事を書いた人:神崎ようこ

特定社会保険労務士・FP
労務管理とライフプラン設計の専門家。
これまでに延べ1,000件以上の相談に対応し、企業の人事労務課題から働く女性の資産形成まで幅広く支援しています。
昇進試験の支援や老後資金・介護準備など、働く女性が直面する課題を解決へ導く記事を執筆しています。



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目次

介護が始まるサインを見極める

ある日、久しぶりに実家へ帰ってみたら——。
母が階段を上がるとき、手すりをぎゅっと握り、息を整えるのに少し時間がかかっていました。

以前は軽やかに上っていたのに…。
胸の奥で、ふっと不安が灯った瞬間でした。

こうした「小さな違和感」は、介護が必要になる前触れかもしれません。

介護はある日突然始まるものではありますが、実際には必ずその前にサインがあります

日常の中のわずかな変化を見つけられれば、心と生活の負担をぐっと減らせます。

たとえば——

  • 階段を上るのが億劫そう
  • 買い物袋を持つ手がすぐに下がる
  • 食事の量が減ってきた
  • 同じ話を何度もするようになった
  • 季節に合わない服を着ている

こうした変化は、身体や認知機能の低下が始まっているサインかもしれません。

見逃さないためには、帰省や電話のときに「最近何食べてるの?」「買い物は誰と行ってる?」など、自然な会話の中でさりげなく様子を探ることが大切です。

気づいたら、まずは慌てずに初期対応を。

かかりつけ医や内科で健康チェックを受け、自治体の「地域包括支援センター」に相談しましょう。

ここでは介護保険の申請やサービス利用の流れを丁寧に教えてくれます。

早めの一歩は、本人の生活の質だけでなく、あなた自身の心の余裕も守ってくれます。


介護準備チェックリスト

項目チェック内容完了チェック
身体機能の変化を確認歩行、階段昇降、食欲、体重変化などを定期的にチェック
認知機能の変化を確認物忘れ、支払い忘れ、時間や場所の感覚の変化を確認
家の安全対策(段差・手すりなど)転倒防止のための段差解消や手すり設置、照明改善
家具・家電の見直し移動しやすい配置、コード整理、簡単操作の家電導入
介護保険制度の理解介護保険の申請方法やサービス内容を把握
公的支援制度の確認高額介護サービス費や医療費控除などの制度を確認
介護費用の試算在宅・施設介護の費用をシミュレーション
資金準備と口座管理親の預貯金、年金、口座管理方法を確認
家族間での役割分担兄弟姉妹・配偶者と事前に役割分担を話し合う
支え合えるネットワーク作り地域やオンラインの介護コミュニティを探す

身体機能の変化に気づくポイント

身体の変化は、動作やしぐさの中にそっと現れます。

たとえば、

  • 以前は信号が青のうちに渡りきっていたのに、最近はギリギリで渡りきる姿が増えた。
  • 階段を上るとき、必ず手すりを握るようになった。
  • 買い物袋を持つ手が何度も休まる。

そうした日常の一コマが、静かに「今までと違うよ」と教えてくれているのです。

もちろん加齢による自然な変化の場合もありますが、「以前との違い」がはっきりしているなら注意が必要です。

特に転倒は、介護生活が始まる大きなきっかけになります。
骨折や入院を機に体力が一気に落ちるケースは珍しくありません。

もし気づいたら、整形外科での体力チェックや、自治体が開催する健康教室、シニア向けフィットネスへの参加がおすすめです。

また、食欲が落ちている場合は、コンビニでも買える「明治メイバランスMiniカップ」など栄養補助食品を取り入れると、体力の維持に役立ちます。

日常に潜む小さなサインを拾えるかどうかが、その後の生活の分かれ道。

たとえばお正月やお盆など、季節の行事をきっかけに帰省して、さりげなく動作や食事の様子を観察するのも一つの方法です。

認知機能の変化に気づくポイント

認知機能の変化は、初めのうちは霧のようにぼんやりしています。

けれど、よく観察すると日常のあちこちに違和感が潜んでいます。

  • 数日前に話したばかりのことを、また尋ねてくる。
  • 公共料金の支払いが滞っている。
  • 冷蔵庫を開けると、賞味期限の切れた食品がいくつも見つかる。
  • あるいは真夏に厚手のセーター、冬に薄手のシャツだけで外に出てしまう。

こうした行動は、季節や温度の感覚が鈍くなっているサインかもしれません。

もしこうした兆しに気づいたら、「もの忘れ外来」や神経内科での受診を早めに検討しましょう。

さらに、介護予防サービスの利用や、地域の「認知症カフェ」に参加するのも有効です。
そこでは同じ立場の人たちと交流し、情報や安心感を得られます。

認知機能の変化は、本人も家族も受け入れるまでに時間がかかります。

でも、早く動くことで進行を遅らせ、できる限り長く「その人らしい暮らし」を続けられる可能性があります。

次のステップでは、これらのサインを踏まえた「具体的な準備の方法」を一緒に考えていきましょう。

事前に整えておく生活環境

「うちはまだ大丈夫」と思っていたのに、いざ介護が必要になった途端、家の危険ポイントが山ほど見つかる——
そんな場面、私は何度も耳にしました。

中には「工事の見積もりだけで1か月、その間に転倒してしまった」という友人の話もあります。

介護のための家の改修は、必要になってからでは時間もお金も想像以上にかかります

だからこそ、まだ元気なうちから少しずつ整えておくことが、安心な暮らしへの近道です。

特に、転倒やケガのきっかけは意外と「家のちょっとした段差」や「廊下の暗さ」、「家具の位置」などから生まれます。

これは台風の前に雨戸を閉めるようなもの。
備えあれば憂いなし、です。

しかも介護保険を使えば、手すりの設置や段差の解消などに補助が出る場合がありますし、「福祉用具レンタル」という制度を使えば、高額な車いすや介護ベッドも月ごとに借りられます。

ここでは、すぐにでも試せる安全対策のチェックリストと、家具・家電の見直しポイントをご紹介します。

家の安全チェックリスト

高齢者がつまずきやすい場所はほぼ決まっています。
私も実家を見直したとき、「危険サファリパーク」かと思うほど発見がありました。

特に玄関・廊下・浴室・トイレは要注意です。

  • 玄関
    靴を履くときにふらつかないよう、腰掛け用ベンチを設置。
    段差はスロープや手すりで解消。
  • 廊下
    滑りやすいマットは撤去し、手すりを設置。
    夜は足元を照らすセンサーライトがあると安心。
  • 浴室
    浴槽のまたぎを低くしたり、滑り止めマットを設置。
    手すりは縦・横の両方があると動作が安定。
  • トイレ
    立ち座りが楽になる便座や横手すりを設置。
    夜間移動用に廊下からトイレまでの照明を確保。

こうした改修には「介護保険の住宅改修制度」(上限20万円、1〜3割負担)が利用できます。

申請はケアマネジャーや地域包括支援センターがサポートしてくれるので、まずは相談から始めましょう。

家具・家電の見直し

家具や家電も、安全性と使いやすさの両方を意識して見直します。

まずは家具の配置
車いすや歩行器を使う可能性を考え、通路幅は最低80cmを確保

家具は角の丸いものに替え、背の高い棚は必ず固定します。
コード類は足に引っかかりやすいので、床に這わせず壁際へ。

家電は「シンプル操作」が鉄則です。
ボタンが多いと混乱しやすく、間違いも増えます。

炊飯器や電子レンジはワンタッチ操作タイプ、エアコンは文字が大きく見やすいリモコンを。
IHクッキングヒーターのように火を使わない調理器具も安心です。

介護が始まったら、「パラマウントベッド」の介護ベッドや「モルテン」の車いすなどをレンタルすれば、初期費用を抑えつつ必要な設備を揃えられます。


家の安全性と使いやすさは、介護生活の質を大きく左右します。

オリンピックで選手が最高のパフォーマンスを出すために会場を整えるように、私たちも「介護のステージ」を整えておくことが、本人にも家族にも安心をもたらすのです。

次は、その環境づくりを支えてくれる「介護サービスの選び方」を見ていきましょう。

介護サービスと制度を理解しておく

「もっと早く知っていれば…」
介護を経験した人の多くが口にする、この一言。

私も母の介護が始まったとき、右も左も分からず、役所の窓口で分厚いパンフレットを渡されて呆然とした記憶があります。
あの時は、気持ちも体も疲れていて、文字を追うのさえ大変でした。

でも実は、介護には「知っているだけで救われる」制度やサービスがたくさんあります。

申請の流れや使えるサービスを、家族がまだ元気なうちに知っておくこと。
それが、いざという時に慌てず、必要なサポートをスムーズに受けるための第一歩です。

介護保険制度は、65歳以上の高齢者(または特定の病気がある40歳以上の方)が、必要に応じて自宅や施設で介護サービスを受けられる公的な仕組みです。

自己負担は原則1割(一定以上の収入がある方は2〜3割)で、たとえば週に数回の訪問介護やデイサービス、一時的に施設に預けるショートステイ、介護用ベッドや車いすのレンタルなど、生活を支えるメニューが揃っています

「制度は難しそう…」と感じるかもしれませんが、大事なのは全て覚えることではなく、「こんな制度がある」と知っておくこと

そうすれば必要になった時、迷わず動けます。

介護保険申請の流れ

介護保険を使うには、まず申請から始まります。

大まかな流れはこんな感じです。

STEP
申請

市区町村の役所地域包括支援センターで行います。
本人や家族が申請でき、印鑑と健康保険証(または介護保険証)を持っていきます。

STEP
認定調査

役所の職員や委託された調査員が自宅や施設を訪れ、日常生活の様子や体の状態をヒアリングします。
主治医の意見書も必要です。

STEP
要介護認定

調査結果と医師の意見をもとに、要支援1〜2または要介護1〜5の認定が決まります。

STEP
ケアプラン作成

認定後、ケアマネジャー(介護支援専門員)と話し合って、どのサービスをどれくらい使うか計画します。
ケアマネさんは、地域包括支援センター居宅介護支援事業所にいます。

STEP
サービス利用開始

契約を交わし、訪問介護やデイサービスが始まります。
必要に応じてプランは見直されます。


この流れを知っておくだけでも、「まず何から始めればいいの?」という迷いがなくなります。

特に、調査や認定には時間がかかるので、早めの申請が安心です。

公的支援制度一覧

介護保険のほかにも、家計や生活を助ける制度があります。

ここでは代表的なものをピックアップします。

  • 高額介護サービス費
    1か月に払った介護サービスの自己負担額が上限を超えると、超過分が戻ってきます
  • 高額医療・高額介護合算制度
    1年間の医療費と介護サービス費を合わせて上限を超えた分が払い戻されます
  • 医療費控除
    確定申告で、かかった医療費や介護費用の一部を所得から差し引けます
    訪問介護の一部など、医療行為に近い介護サービスも対象になることがあります。
  • 自治体独自の補助
    例として、東京都にはおむつや介護用シーツの購入費を助成する制度があります。
    こうした制度は自治体ごとに違うため、地元の役所で確認しましょう。

今は介護保険制度も時代に合わせて見直しが進んでおり、オンライン申請やスマホ相談ができる自治体も増えてきています。

高齢化が進む日本では、これからも制度が少しずつ変わっていくはず。
だからこそ「知識の更新」も大切です。

介護は、知っていれば使える制度が驚くほど多い分野です。

次は、こうした制度を活かしながら、家族の負担を減らす日常の工夫について見ていきましょう。

お金の準備と管理方法

介護は、体力や時間だけでなく「お金」という現実とも向き合わなくてはなりません。

私自身、母の介護が始まったときに最初に感じたのは、体力的な疲れよりも「このペースで続けていけるだろうか」という金銭面の不安でした。

介護の現場では、想像していなかった出費がぽつぽつと湧き出すように増えていくのです。

結論からいえば、介護費用は「見える化」と「管理の仕組みづくり」で、驚くほど安心感が変わります。

ここでは、具体的な金額の目安と、日々のやりくりをラクにするための準備方法をご紹介します。

介護にかかるお金の目安

介護の出費は、大きく「在宅介護」と「施設介護」に分かれます。

どちらを選ぶかで必要な金額や費用の種類が変わってきます。

在宅介護の場合

  • 介護保険サービスの自己負担:1〜3割(介護度や利用頻度によって変動)
  • 平均的な月額:2〜5万円程度
  • 追加費用:おむつや介護用パッド(5,000〜1万円)、福祉用具レンタル費用、光熱費の増加など

施設介護の場合

  • 有料老人ホーム(介護付き):月額15〜30万円(入居一時金が数百万円かかる場合も)
  • 特別養護老人ホーム(特養):月額8〜15万円程度(所得や介護度による)
  • ショートステイ:1泊あたり数千円〜1万円程度(食費・居住費込み)

施設介護は高額なイメージがありますが、在宅でもサービス利用回数が増えれば同じくらいの出費になることもあります。

加えて、急な入院費や、段差解消・手すり設置などの住宅改修費用が突然発生することも少なくありません。

実際、私の友人は、冬の暖房代だけで月の光熱費が1万円近く増えたと話していました。

介護が始まる前に「生活費+10〜20%」の余裕を持って予算を組んでおくと安心です。

資金準備と口座管理の方法

介護費用をスムーズに管理するためには、「お金の出どころ」と「使い道」をはっきり分けておくことが大切です。

親のお金と家族のお金が混ざってしまうと、後々の相続やきょうだい間の信頼関係にも影響します。

資金準備のステップ

  1. 親の預貯金・年金の把握
    通帳や年金通知書を整理し、毎月の収入と支出を確認します。
    見えないお金の流れは不安の元です。
  2. 介護専用口座を作る
    入出金をここに集め、通帳を見れば一目で把握できる状態にします。
  3. 不足分の準備
    民間の介護保険や医療保険の給付条件を確認。
    不足分は家族で分担方法を決めておきます

口座管理に役立つ制度

  • 任意代理契約
    元気なうちに契約を結び、家族が銀行の手続きや支払いを代行できるようにする制度。
    公証役場で手続きします。
  • 成年後見制度
    判断能力が低下しても、家庭裁判所が選任した後見人が財産管理や契約を行えます。
    ただし開始まで時間がかかるので、早めの検討が必要です。

実際、離れて暮らすきょうだい同士で介護を分担しているケースでは、こうした法的手続きをしていないために、銀行から1円も引き出せずに困ったという話をよく耳にします。

元気なうちの「ひとこと相談」が、その後の何年分もの安心につながるのです。


介護費用は、まるで梅雨の小雨のように、気づけばたまっていることがあります。
でも、あらかじめ見通しを立てて、専用口座や制度を活用すれば、不安はぐっと減らせます。

次は、この金銭面の安心を土台にして、家族の心と体を守る介護の進め方についてお話ししていきます。

家族・仕事との調整

介護が始まると、多くの人がつい「自分がやらなきゃ」と気を張ってしまいます。

私も以前、母の介護が始まったとき、最初の数か月は一人で全て背負い込みました。
結果、夜中のトイレ介助で寝不足になり、仕事ではミスが増え、気づけば心まで疲れていたんです。

介護は、短距離走ではなく長距離マラソン。
ゴールが見えないからこそ、途中で息切れしないようにペース配分と伴走者が必要です。

特に女性は家事や子育てと同時進行になることも多く、無理をするとあっという間に燃え尽きてしまいます。

だからこそ、家族間で役割をはっきり決め、さらに職場の制度をフル活用することが、介護と生活を両立させるカギになるのです。

家族間での役割分担方法

「もしものとき」会議を、元気なうちに

介護が本格的に必要になる前から、兄弟姉妹や配偶者と集まり、「もしものとき」会議を開いておきましょう。

感情が高ぶる前に話し合うことで、冷静に現実と向き合えます。

話し合いのポイントはこんな感じです。

  • 親の健康状態や介護度の見通し
  • 自宅介護か施設介護か、その選択肢
  • 費用の分担方法
  • 誰がどの曜日・時間帯を担当できるか

話し合いをスムーズにする工夫

STEP

まずは医師の診断やケアマネジャーの意見など、客観的な情報を共有しましょう。

STEP

次に、通院付き添い・買い物・掃除・食事作り・金銭管理などの介護タスクを洗い出し、リスト化します。

STEP

あとは、それぞれが得意なこと、可能なことを担当する形にするとスムーズです。


たとえば、近くに住む妹が通院同行を担当し、遠方にいる兄は金銭管理と費用負担を引き受ける。
さらに、LINEグループで毎日の体調や出来事を共有すれば、「そんな話聞いてない!」という行き違いも防げます

こうして家族内の役割が固まっていれば、職場との調整にも迷いがなくなります。

職場での調整方法

介護と仕事の両立は、「知っている制度」をどれだけ使いこなせるかが勝負です。

意外と知られていませんが、日本の法律では介護のための休暇や勤務調整の権利が保障されています。

主な制度と使い方

  • 介護休暇(年5日)
    半日や時間単位で取れるので、通院付き添いや役所手続きに便利です。
  • 介護休業(通算93日まで)
    最大で3か月間、まとまった休みが取れます。
    施設探しや在宅介護の初期対応に有効。
  • フレックスタイム制度
    出勤や退勤の時間を柔軟にできるため、朝の通院や夕方の訪問介護に対応しやすくなります。
  • テレワーク制度
    自宅で仕事ができれば、介護の合間にも業務を続けられます。

家族間の役割分担と職場での制度活用は、車の両輪のようなもの。
どちらか一方だけでは走り続けられません。

どちらも整えて初めて、あなた自身の生活も、親の暮らしも守れるのです。

そして、体制が整えば心にも少し余裕が生まれます。

その余裕が、介護を「ただ大変なだけの時間」ではなく、「家族との大切な時間」に変えてくれるはずです。

心の準備と情報ネットワーク作り

介護は「体力勝負」と思われがちですが、実際に始めてみると心の負担のほうがずっと重く感じることもあります。

私自身、母の介護が始まったとき、体力的には何とかこなせても、夜中ふと涙が出ることがありました。
「誰にも弱音を吐けない」あの孤独感は、体の疲れよりもずっと堪えるものです。

特に女性は、家事や感情面のケアまで自然と担うことが多く、気づけば自分の感情を置き去りにしてしまいがち。

だからこそ、介護を始める前に心の準備と「支え合えるネットワーク」を作っておくことが、長く続けられる秘訣です。

介護者が陥りやすい心の負担

介護の現場では、次のような心の負担がよく見られます。

  • 燃え尽き症候群
    毎日全力で介護を続け、ある日突然やる気も感情も空っぽになる状態。
    まるで色鮮やかな景色が一瞬でモノクロになるような感覚です。
  • 孤独感
    友人とのランチや趣味の時間が減り、気づけば「介護」と「家」の往復だけ。
    世界が小さな箱の中に閉じ込められたように感じます。
  • 罪悪感
    介護の合間にドラマを見たりカフェに寄っただけで、「こんなことしていていいのかな」と胸がチクッと痛む。

こうした負担に対抗するためにできることは、小さな習慣からです。

  • 小さな休息を習慣化
    15分だけでも、自分の好きな音楽を聴いたり、温かいお茶を手のひらで包んでゆっくり味わう時間を作る。
  • 感情を吐き出す場を持つ
    信頼できる友人や家族に話すのはもちろん、カウンセラーや「日本臨床心理士会」の相談窓口も活用できます。
    最近はオンラインで顔を出さずに話せるサービスも増えています。
  • 完璧を目指さない
    「今日はこれだけできたら十分」と、自分に合格点を出す練習をする。

介護者が陥りやすい心の負担

心の負担状態の特徴原因例対策例
燃え尽き症候群急にやる気や感情が失われる長期間の全力介護、休息不足15分の休息習慣、完璧を求めない
孤独感人付き合いや趣味が減り世界が狭くなる介護中心の生活、交流機会の減少友人との連絡、介護者サロン、SNS交流
罪悪感自分の時間に「申し訳なさ」を感じる介護は常に優先すべきという思い込み自分に合格点を出す、気分転換の時間を許可する

よくある疑問として、「弱音を吐いたら家族に迷惑じゃない?」という声があります。
でも、実はその逆。

早めに弱音を出すほうが、あなたも家族も守ることにつながります。

我慢しすぎて心が折れてしまったら、介護自体が続けられなくなってしまうのです。


支え合えるネットワーク作り

介護は一人で背負うものではありません。
仲間とつながるだけで、心がふっと軽くなる瞬間があります。

  • 地域の支援拠点
    全国各地にある「地域包括支援センター」では、介護サービスや福祉制度、家族支援プログラムについて無料で相談できます。
  • 自治体の介護者サロン
    同じ立場の人と話すことで、「私だけじゃないんだ」と実感できる貴重な場所です。
  • オンライン・SNSの活用
    全国の介護者同士が体験談を共有する場もたくさんあります。
    TwitterやInstagramの「#介護日記」「#在宅介護」といったタグを使えば、共感や励ましの言葉が自然と届くことも。

実際、ある50代の女性は、地域包括支援センターから紹介された「介護者の会」に参加し、毎月の集まりで愚痴も笑いも共有できるようになりました。
そこで得た施設の情報や補助金制度は、介護生活を大きく助けたそうです。


ネットワーク作りの手段と特徴一覧

手段特徴メリット
地域包括支援センター介護・福祉制度全般を無料相談制度の正しい情報が得られる
自治体の介護者サロン介護者同士の交流会共感と情報交換ができ孤立感が減る
オンラインコミュニティ全国の介護者とオンラインで交流匿名参加OK、時間や場所に縛られない
SNS(Twitter, Instagram)気軽に短文や写真で発信・交流同じ悩みを共有でき、励まし合える

介護の日々は、孤独なマラソンのように感じるかもしれません。
でも、横に並んで走ってくれる人がいると、ペースも呼吸も安定します。

心の準備とネットワーク作りが、その伴走者を増やす第一歩なのです。


介護前の心の準備チェックリスト

チェック項目Yes/No
自分の気持ちを話せる相手が1人以上いる
毎日15分の休息時間を確保できている
完璧を求めず「今日はここまで」と思える
利用できる地域包括支援センターの場所を知っている
オンラインで介護者同士と交流できる手段を持っている
定期的に外出や趣味の時間を作っている
介護サービスや補助金制度の概要を把握している
家族や親族と介護方針について事前に話し合っている
自分の健康管理(食事・睡眠・運動)を意識できている
介護以外の楽しみや生きがいを持っている
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まとめ

介護は、一人で背負うものではありません。

事前に準備を整え、支えてくれる仲間や相談先を確保することが、長く続けられる最大の秘訣です。

日々の小さな休息や感情を吐き出す場を持つことで、孤立や燃え尽きから自分を守れます。

地域の支援機関やオンラインコミュニティは、情報だけでなく心の支えにもなります。

準備をしておけば、介護の日々はもっと穏やかで安心なものになります。


(再掲)介護準備チェックリスト

項目チェック内容完了チェック
身体機能の変化を確認歩行、階段昇降、食欲、体重変化などを定期的にチェック
認知機能の変化を確認物忘れ、支払い忘れ、時間や場所の感覚の変化を確認
家の安全対策(段差・手すりなど)転倒防止のための段差解消や手すり設置、照明改善
家具・家電の見直し移動しやすい配置、コード整理、簡単操作の家電導入
介護保険制度の理解介護保険の申請方法やサービス内容を把握
公的支援制度の確認高額介護サービス費や医療費控除などの制度を確認
介護費用の試算在宅・施設介護の費用をシミュレーション
資金準備と口座管理親の預貯金、年金、口座管理方法を確認
家族間での役割分担兄弟姉妹・配偶者と事前に役割分担を話し合う
支え合えるネットワーク作り地域やオンラインの介護コミュニティを探す
神崎ようこ
神崎ようこ

この記事を書いた人:神崎ようこ

特定社会保険労務士・FP
労務管理とライフプラン設計の専門家。
これまでに延べ1,000件以上の相談に対応し、企業の人事労務課題から働く女性の資産形成まで幅広く支援しています。
昇進試験の支援や老後資金・介護準備など、働く女性が直面する課題を解決へ導く記事を執筆しています。

介護が始まる前に知っておきたい「介護準備チェックリスト」10項目

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