管理職を目指す女性にとって、「ロールモデルをどう見つけるか」は避けて通れないテーマです。
でも実際は、
「自分の理想にぴったり合う人なんていない」
「この人の真似をすればいいの？」
と悩んでしまう方が少なくありません。
私自身も、管理職になりたての頃は同じような迷いを抱えていました。
結論から言うと、ロールモデルは「完璧に真似すべき対象」ではなく、「自分のキャリアにヒントをくれる存在」として捉えるのが正解です。
人によって環境や価値観、ライフステージは違いますから、誰かをそのままコピーするのは現実的ではありません。
むしろ「いいな」と思える部分を少しずつ取り入れ、自分らしいスタイルを築いていくことが大切なのです。
本記事では、女性管理職にとってロールモデルから何を学べるのか、そして理想像が見つからないときの考え方を整理します。
さらに、「自分自身がロールモデルになっていく」という視点も提示します。
読み終える頃には、「完璧なモデルはいなくても大丈夫」と肩の力が抜け、キャリアを前向きに歩んでいけるはずです。
- 自分の職場に女性管理職が少なく、将来像を描きにくい方
- 管理職試験を受けるべきか迷っている方
- 管理職としてのキャリアと家庭・プライベートの両立に不安な方
- ロールモデルを探しても「完璧すぎて参考にならない」と感じる方
なぜ「女性のロールモデル」が必要なのか
正直に言うと、管理職を目指す女性にとって「自分にとってのロールモデルを見つけること」は、キャリアの地図を手に入れるようなものです。
多くの女性が試験や昇進を前にして感じるのは、
「私にできるのかな？」
「家庭やプライベートと両立できるんだろうか」
という漠然とした不安です。
私自身も20代後半で初めて昇進の声がかかったとき、真っ先に頭に浮かんだのは喜びではなく「生活が全部ひっくり返るのでは？」という怖さでした。
特に周囲に女性管理職が少ない環境では、未来を描く手がかりが乏しく、想像ばかりが膨らんでしまいがちです。
男性の上司はもちろん頼りになります。
でも、結婚や出産、親の介護といったライフイベントに向き合いながらキャリアを積む女性にとっては、「どうすれば実際に回していけるのか」というリアルな部分が見えにくいのも事実です。
だからこそ、自分と似た環境を歩んできた女性の存在が大きな支えになるのです。
ただ、ここで誤解してほしくないのは「完璧な成功者を見つけなければならない」という思い込みです。
たとえば、同じ部署で数年前に管理職になった先輩が、試行錯誤しながらもチームをまとめている姿。
それは決してキラキラ輝くだけの理想像ではなく、「あの人も悩んでるけど頑張ってる。私も挑戦できるかも」という身近な勇気につながります。
私の知人の女性社員の話ですが、彼女は同じ部署の先輩をロールモデルにしていました。
その先輩は、小学生の子どもを育てながら課長として働いていて、時には保育園からの呼び出しで早退することも。
でもその度に上手に周囲へ説明し、チームの信頼を崩さずに回していました。
完璧ではなくても、自分らしい工夫でバランスをとっている姿に触れた瞬間、彼女は「管理職って無理じゃない。私にもできるかもしれない」と心が軽くなったそうです。
ロールモデルとは未来の自分を映す「鏡」のような存在です。
そして、その鏡は一枚でなくてもいい。
仕事のやり方はAさん、家庭との両立はBさん、リーダーシップのスタイルはCさん、と複数の人の姿を少しずつ取り入れて、自分なりの道を描いていけばいいのです。
だからこそ、ロールモデルは管理職を目指す女性にとって欠かせない存在です。
孤独感をやわらげ、不安を「現実的な工夫」へと変えてくれる力があるからです。
次の章では、そんなロールモデルを実際にどこで見つけられるのか──職場の中と外、それぞれの方法を具体的にご紹介していきます。
ロールモデルの探し方【職場内・職場外】
ロールモデルを探すときに大切なのは、「社内」か「社外」かのどちらかに絞るのではなく、両方に目を向けることです。
自分に合ったキャリアのヒントは、意外なところに転がっているからです。
私自身も、最初は会社の中だけで手本を探そうとしたのですが、思うように見つからずに悩んだ時期がありました。
けれど外に視野を広げてみたら、別の業界の女性リーダーの姿から学べることがたくさんあると気づいたのです。
では、具体的にどうやって探していけばいいのでしょうか。
職場内で探す場合
まずは、身近な職場の中にヒントを求めてみましょう。
同じ会社で働く女性管理職は、最もリアルなモデルになり得ます。
観察のポイントはいくつかあります。
- リーダーシップの取り方：
単に指示が的確かどうかではなく、会議の雰囲気づくりや、チームの空気をどう温めているかを見てみると学びが多いです。 - 部下との関係性：
一人ひとりの強みをどう見つけて伸ばしているのか。
そこには、教科書には載っていない工夫が隠れています。 - ワークライフバランスの工夫：
子育てや親の介護とどう折り合いをつけているか。
たとえば、残業を避けるために朝型に切り替えている先輩の話を聞いたとき、私は「そんなシンプルな工夫でいいんだ」と目から鱗が落ちました。
直接話を聞いてみるのも勇気がいりますが、とても効果的です。
「忙しそうで声をかけにくい」と思ってしまう気持ちはよくわかります。
でも、多くの管理職の女性は、後輩からの相談を意外と嬉しく感じるものです。
もし一歩が踏み出せないなら、上司や人事とのキャリア面談で「女性の先輩に話を聞いてみたい」と伝えるのも一つの方法です。
実際に、大手企業では、女性社員が先輩から学べるように社内メンター制度を整えているところも少なくありません。
こうした仕組みを利用すれば、自然な流れで先輩とつながることができます。
職場外で探す場合
とはいえ「うちの会社には女性管理職がほとんどいない」という声も多く聞きます。
私の友人もまさにそうで、最初は孤独を感じていました。
でも彼女は会社の外に飛び出したことで、人生が大きく変わったんです。
外での探し方はいろいろあります。
- 異業種交流会や勉強会：
女性リーダーが集まる場「J-Win（NPO法人ジェイウィン）」などでは、異なる業界の女性が交流しています。
普段の職場では出会えないような人たちの話は、驚くほどの刺激になります。 - オンラインコミュニティ：
FacebookグループやLinkedInでは、女性のキャリアをテーマにしたコミュニティがたくさんあります。
匿名で気軽に参加できるものもあるので、「相談したいけど周囲には言えない」ときの逃げ場にもなります。 - 書籍・インタビュー記事・SNS：
もし直接会う機会がなくても大丈夫です。
著名な女性リーダーの本や記事、SNSでの発信からも多くのヒントが得られます。
むしろ失敗談や挫折の経験に触れたときの方が「私も頑張ってみよう」と勇気をもらえることが多いものです。
このように、社外で多様なモデルとつながることは、自分の世界を一気に広げてくれます。
社内だけで考えていると「こうでなければならない」という思い込みに縛られがちですが、外の世界には驚くほど多彩なリーダー像があります。
その違いに触れることで、自分らしいキャリアの形が少しずつ見えてくるのです。
結局のところ、ロールモデルは職場内外の両方で探すことが一番です。
社内では現実的な工夫を学び、社外では新しい視点や価値観に触れる。
両方を持ち合わせることで、キャリアの道筋がより豊かに描けます。
次の章では、実際に見つけたロールモデルからどんなことを学べばいいのか──その具体的なポイントを一緒に考えていきましょう。
ロールモデルから何を学ぶ？
ロールモデルというと、「この人みたいにならなきゃ」と思い込みがちですが、実はそうではありません。
大切なのは「そっくり真似をすること」ではなく、「自分のキャリアのヒントをもらうこと」。
だって、環境も、価値観も、ライフステージも、一人ひとりまったく違いますよね。
誰かのやり方をそのままコピーしても、結局は息苦しくなってしまう。
私自身も以前、憧れていた先輩の真似をして全部背負い込んだことがあります。
最初は「頑張っている自分」に酔えたけれど、数か月で息切れしてしまったんです。
その経験から、「参考にする」くらいがちょうどいいと気づきました。
では、具体的にどんなことを学べるのでしょうか。
仕事の優先順位の付け方
管理職になると、とにかく仕事が雪崩のように押し寄せてきます。
全部を完璧にこなそうとしても、時間も体力も足りません。
大切なのは「何を優先して、何を任せるか」を判断する力です。
私の知り合いの女性マネージャーは、「自分しかできないこと」と「人に委ねてもいいこと」をきっちり分ける工夫をしていました。
たとえば、大きな方針を決める会議には必ず出席するけれど、細かい資料作成は部下に任せる。
その代わり、部下が作ったものをしっかり確認して「よくできてるね」とフィードバックする。
こうして限られた時間を成果につながる仕事に集中しているのです。
楽天グループの女性役員のインタビューでも同じような話を聞きました。
「全部自分でやるより、信頼して任せる方が結果的に大きな成果につながる」と。
これは「頑張りすぎない」ための大切なヒントだと思います。
部下への接し方や信頼関係の築き方
次に学べるのは「人との関わり方」です。
管理職は、一人で成果を出す仕事から「チームで成果を出す仕事」に変わります。
ある先輩は、毎週10分だけでも必ず1on1をしていました。
「10分で何ができるの？」と思うかもしれませんが、短いからこそ続けやすく、部下も気軽に話せるんです。
その小さな積み重ねが「この人は自分を見てくれている」という安心感につながるのだと感じました。
大手企業でも1on1面談を制度化しているところは多いですが、こうした取り組みは決して大企業だけの話ではありません。
小さな習慣を取り入れることで、どんな職場でも信頼関係は築けるのです。
家庭やプライベートとの折り合いのつけ方
「仕事と家庭の両立、本当にできるの？」
これは多くの女性が抱える一番の悩みではないでしょうか。
私も管理職試験を受ける前、同じことを自問自答しました。
身近な先輩の話を聞いて気づいたのは、両立は「完璧にやること」ではなく、「工夫して無理を減らすこと」だということ。
たとえば、家事を外部に頼む。CaSy（カジー）のような家事代行サービスを利用するのは、決して特別なことではありません。
むしろ「仕事を続けるための必要な投資」と考えると気が楽になります。
また、家族に素直に協力をお願いすることも大切です。
私の友人は「毎週水曜日は夫が夕食担当」とルールを決めただけで、気持ちがぐっと軽くなったそうです。
完璧を目指さなくていい。
自分らしいリーダーシップの形をどう作るか
最後に一番大切なのは、「自分らしいリーダーシップ」を見つけることです。
リーダーにはいろいろなタイプがあります。
冷静沈着に指揮をとる人もいれば、明るさでチームを引っ張る人もいます。
私は以前、無理に「威厳のある上司」を演じようとして、逆に部下が委縮してしまったことがありました。
そのとき先輩に「あなたは明るさで周りを元気にできるタイプなんだから、それを活かせばいい」と言われて救われました。
そこから肩の力を抜いて、自然体で関わるようにしたら、チームの雰囲気がぐっと良くなったんです。
つまりロールモデルは「正解」を示す存在ではなく、「ヒントをくれる存在」。
そこから自分に合う部分を少しずつ取り入れ、最終的に「自分だけのリーダー像」を形にしていけばいいのです。
結局のところ、学ぶべきなのは「完璧な真似」ではなく、「自分らしさを大切にした取り入れ方」です。
仕事の優先順位、部下との関わり方、家庭との折り合い、リーダーシップの形──その一つひとつがキャリアを支えるヒントになります。
そして次は、もし「どうしてもロールモデルが見つからない」と感じるときにどうすればいいのか。
そんなときのヒントを一緒に考えていきましょう。
ロールモデルが見つからないときのヒント
「この人だ！」と思えるような完璧なロールモデルが見つからずに、もやもやすることってありませんか。
私自身、管理職になりたての頃はそうでした。
周囲に尊敬できる先輩はいても、「すべてを真似したい」と思える存在にはなかなか出会えなかったんです。
でも振り返ってみると、それでよかったんだと思います。
ロールモデルは一人に絞る必要はなくて、むしろ分野ごとに「いいな」と思える人を少しずつ参考にする方が、心も軽くなるし現実的なんです。
無理に「一人の理想像」を探さなくていい
「理想のロールモデルが見つからない…」と悩んでいる女性は多いです。
実際、管理職の働き方やライフスタイルは人それぞれ。
誰か一人を追いかけてしまうと、「あの人みたいにはなれない」と余計に落ち込んでしまうこともあります。
私もかつては「完璧な先輩」を探そうとして、比べては落ち込んでいました。
でも、冷静に考えたらそれは無理な話。
みんな背景が違うし、ライフステージもバラバラです。
むしろ「この人の意思決定の仕方は参考になるな」とか、「あの人の家庭との向き合い方は真似したい」とか、部分ごとに切り取って学ぶ方が現実的で気持ちもラクになります。
分野ごとに複数の人を組み合わせて学ぶ
具体的に言うと、仕事のやり方は直属の上司から、家庭との両立は社外の先輩から、人間関係の工夫はSNSで発信している起業家から──そんなふうに「いいとこ取り」をすればいいんです。
- 仕事のやり方：
たとえば直属の上司の「会議を短時間でまとめる力」や「判断の早さ」はすぐに真似できるスキルです。 - 家庭との両立：
ワーキングマザーの先輩が「週末はタスカジに掃除をお願いして、家族との時間を優先している」と話してくれたとき、私は胸が軽くなりました。
最近は CaSy のようなサービスを使っている管理職の女性も多く、「支援を受けるのも立派な選択なんだ」と背中を押されます。 - 人間関係や気持ちの持ち方：
InstagramやX（旧Twitter）で発信している女性リーダーの「今日は失敗したけど、次に活かす」といった等身大の言葉に救われる日もあります。
まるでジグソーパズルのピースを集めるように、部分ごとにいろんな人から学んでいく。
そうすると、自分に合ったキャリア像が自然と形になっていきます。
ロールモデルの学び方（分野ごとに参考）
| 分野 | 参考にする相手 | 学べることの例 |
|---|---|---|
| 仕事のやり方 | 上司・部署の先輩 | 会議の進め方、意思決定のスピード |
| 家庭との両立 | 社外の先輩、家事代行利用者 | 家事分担の工夫、サービス活用法 |
| 人間関係 | SNSで発信する女性リーダー | マインドセット、モチベーション維持 |
「自分もロールモデルかもしれない」という視点を持つ
そして忘れてはいけないのは、「私なんてまだまだ…」と思っている自分自身も、すでに誰かの参考になっているということです。
たとえば後輩から「先輩が資格試験に挑戦している姿を見て、私も勇気を出しました」と言われたことがありました。
実際、資生堂では社内イントラネットで社員のキャリアストーリーを紹介し、同じ会社で働く人たちが「この人みたいにやってみたい」と学べる仕組みをつくっています。
大きな舞台でなくても、自分の働き方そのものが誰かの力になっているんです。
ロールモデルは一人に絞る必要はありません。
分野ごとに複数の人を参考にしながら、自分らしいスタイルを作っていけば十分です。
そしてある日ふと振り返ったとき、自分自身が次の世代にとってのロールモデルになっているかもしれません。
ロールモデル探しは「与えられるもの」ではなく、「自分と周りでつくっていくもの」。
そう考えると、毎日の働き方や選択が少しずつ誇らしく思えてきませんか。
ロールモデルの捉え方の変化
| 従来の考え方 | 新しい考え方 |
|---|---|
| 完璧な一人を真似る | 分野ごとに複数人から学ぶ |
| 自分は学ぶ側だけ | 自分も誰かに学ばれている |
| 「モデルがいない」と悩む | 「部分ごとに学べばいい」と気持ちが軽くなる |
ロールモデル循環イメージ
先輩や外部から学ぶ
自分なりに取り入れて働き方に反映
その姿を後輩や同僚が学ぶ
次の世代へバトンがつながる
次のまとめでは、ここまでのポイントを整理しながら、「自分らしいキャリア」を歩んでいくための一歩を後押ししていきます。
まとめ
ここまで、女性管理職にとってのロールモデルの捉え方や、学び方のヒントについてお伝えしてきました。
最後に整理しながら、これからのキャリアにどう活かせるかをまとめましょう。
特に女性の場合、家庭との両立やキャリアの積み方において選択肢が多く、正解も一つではありません。
そのため、誰か一人を追いかけるのではなく、複数の人の「いい部分」を少しずつ参考にするほうが現実的です。
たとえば、仕事の優先順位の付け方は直属の上司から学び、部下との信頼関係の築き方は別部署の先輩から、家庭との両立の工夫は家事代行サービスを活用している同僚から学ぶ──
そんなふうに「パズルを組み合わせる」ように参考にすれば、自分らしいスタイルが形になっていきます。
資格取得に挑戦する姿勢や、部下を思いやるリーダーシップは、周囲にとって十分参考になります。
企業によっては資生堂のように、社員のキャリアストーリーを共有し合い、互いに学び合う仕組みを整えているところもあります。
自分自身もその一員だと考えることで、キャリアへの向き合い方が前向きに変わっていきます。
つまり、ロールモデル探しは「一人の完璧な存在を探すこと」ではなく、「自分と他者が一緒に育てていく循環」です。
そう捉えると、「私にはモデルがいない」という不安は和らぎ、「今ある環境の中で学べること」を見つけやすくなります。
女性が管理職として歩む道は、まだ社会的にも模索の途中です。
しかし、だからこそ柔軟に学び、自分らしい形をつくっていけるチャンスがあります。
小さな一歩でも、必ず次の世代にとっての希望になります。
あなた自身が学びながら、同時に誰かの道しるべになっている。
その事実を心に留めながら、これからのキャリアを歩んでいきましょう。
- ロールモデルは「完璧に真似する対象」ではなく、「学びのヒントをくれる存在」として捉える
- 分野ごとに複数の人から部分的に学び、パズルのように自分らしいスタイルを組み立てる
- 自分自身もすでに誰かのロールモデルになっていると意識することで、学びに前向きになれる
